貨物自動車運送事業

 貨物自動車運送事業は、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業、貨物軽自動車運送事業に分類され、ここでは主に一般貨物自動車運送事業について取り上げます。

 一般貨物自動車運送事業とは、トラックを使用して不特定多数の荷主から運送の依頼を受け、荷物を運送し、運賃を受ける事業を指します。
 一般貨物自動車運送事業を経営しようとする方は、国土交通大臣または地方運輸局長の許可が必要です。
 主な許可要件は以下の8つです。

営業所
 建物について使用権原があるかどうかについて、自己所有なら『登記簿謄本等』、借入れなら概ね契約期間が1年以上(1年に満たない場合は、契約期間満了時に自動的に更新される場合に限りOK)の『賃貸借契約書、使用承諾書等(写)の提出が必要です。

 立地について、都市計画法、建築基準法、消防法、農地法等関係法令に抵触しないことを旨とする『宣誓書』の提出が必要です。
 
 規模について中部運輸局では、10㎡以上の占有できる広さがあることが基本のようですが、10㎡未満でも机、いす、電話等の営業上の対応を行う施設(計画)を有し、かつ運行管理等事業遂行上支障がなければOKとされているようです。関東運輸局に具体的基準がなかったので問い合わせる必要があります。
事業用自動車
 車両数は種別毎に5両以上であることが必要です。また、計画する事業用自動車に牽引車、被牽引車を含む場合の最低車両数の算定方法は、牽引車+被牽引車を一両と算定されます。

 使用権原については、状況に応じて
 (1)自社保有車両により確保する場合は、『自動車検査証(写)
 (2)購入による場合は、『売買契約書又は売渡承諾書等(写)
 (3)リース契約による場合は、契約期間が概ね1年以上である『自動車リ
    ース契約書(写)
を提出する必要があります。

 構造について計画する自動車の大きさ、構造等が輸送する貨物に対し適切なものであることを要します。
車庫
 原則として営業所に併設していることが必要ですが、併設できない場合は、東京都(特別区に限る)、神奈川県(横浜市、川崎市に限る)は営業所~車庫間で直線距離で20㎞以内、上記以外の関東圏内なら10㎞以内であるならOKとされています。
 
 車両と車庫の境界及び車両相互間の間隔が50㎝以上確保され、かつ、計画する事業用自動車の全てを収容できるものであることを要します。

 他の用途に使用される部分と明確に区分されていることを要します。

 使用権原については、営業所の使用権原についてと同じです。

 立地については、営業所の立地についてと同じです。

 車両の幅制限について、事業用自動車が車庫の出入りに支障のないものであり、前面道路との関係において車両制限令市街地区域なら第5条、市街地区域外なら第6条)に抵触していないものであることを要し、そのことを証する道路幅員証明書を取得しておく必要があります。(前面道路が国道の場合は不要とされています。
 なお、前面道路が市道の場合にあっては、当該市道の通行に係る使用権限を有するものの承認があり、かつ、事業用自動車が当該市道に接続する公道との関係において車両制限令に抵触しないものであることを要します。     
休憩・睡眠施設
 乗務員が有効に利用することができる適切な施設であることを要します。

 睡眠を与える必要がある乗務員1人当たり2.5㎡以上の広さを有することを要します。

 原則として、営業所又は車庫に併設していることが必要ですが、併設できない場合は、車庫の営業所と併設できない場合と同じです。

 使用権原については、営業所・車庫の使用権原についてと同じです。

 立地については、営業所・車庫の立地についてと同じです。


 また、営業所、車庫等を含む施設の『案内図』、『見取図』、『平面(求積)図』を作成・提出する必要があります。
運行管理体制
 事業の適正な運営を確保するために、次に掲げる管理体制を整えていることが必要です。(『事業用自動車の運行管理の体制を記載した書類』の記入内容です。)

 事業計画を適切に遂行するため必要とする員数の常時選任であり、日雇い、二月以内の期間を定めて使用される方又は使用期間中の方(14日を超えて引き続き使用されるに至った方を除く。)ではない事業用自動車の運転者を常に確保できるものであることを要します。

 選任を義務づけられる員数の常勤の運行管理者及び整備管理者を確保する管理計画があることを要します。

 勤務割及び乗務割が平成13年8月20日国土交通省告示第1365号に適合するものであることを要します。

 運行管理の担当役員等運行管理に関する指揮命令系統が明確であることを要します。

 車庫が営業所に併設できない場合には、車庫と営業所が常時密接な連絡を取れる体制を整備するとともに、点呼等が確実に実施される体制が確立していることを要します。

 事故防止についての教育及び指導体制を整え、かつ、事故の処理及び自動車事故報告規則に基づく報告の体制について整備されていることを要します。

 危険品の運送を行うものにあっては、消防法等関係法令に定める取扱い資格者(危険物取扱者等)が確保されるものであることを要します。
資金計画
  資金調達について十分な裏付けがあることを要します。(『所要資金及び調達方法を記載した書類』の記入内容です。)

  事業の開始に要する資金(以下、「所要資金」と表記します。)の見積りが適切であり、かつ、資金計画が合理的かつ確実なものであることを要します。
 なお、所要資金は次のア.~カ.の合計額とし、各費用ごとに以下に示すところにより計算されているものであることとされています。


ア.車 両 費   取得価格 (分割の場合は頭金及び6ヶ月分の割賦金。ただし、
        一括払いの場合は取得価格。)又は、リースの場合は6ヶ月分
        の賃借料等

イ.建 物 費   取得価格 (分割の場合は頭金及び6ヶ月分の割賦金。ただし、
        一括払いの場合は取得価格。) 又は、6ヶ月分の賃借料、敷金
        等

ウ.土 地 費   取得価格 (分割の場合は頭金及び6ヶ月分の割賦金。ただし、
        一括払いの場合は取得価格。) 又は、6ヶ月分の賃借料、敷金
        等

エ.保 険 料   ①  自動車損害賠償責任保険料又は自動車損害賠償責任共済
           掛金の1ヵ年分
        ②  賠償できる対人賠償自動車保険(任意保険)料の1ヵ年
           分又は交通共済の加入に係る掛金の1ヵ年分
        ③  危険物を取扱う運送の場合は、当該危険物に対応する賠
           償責任保険料の1ヵ年分

オ.各 種 税   租税公課の1ヵ年分

カ.運転資金   人件費、燃料油脂費、修繕費等の2ヶ月分


  所要資金の全額以上の自己資金が、申請日以降許可日までの間、常時確保されていることを要し、預貯金については申請時点及び処分まで適宜の時点の『残高証明書等』の提出をもって確認されます。
 また、預貯金以外流動資産額運輸局長が認めた場合に限ります。)については、申請時点及び処分までの適宜の時点の『見込み貸借対照表等』をもって確認されます。
法令遵守
 申請者又はその法人の役員は、貨物自動車運送事業の遂行に必要な法令知識を有し、かつ、その法令を遵守することを要し、そのことに関して『法令試験』に合格する必要があります。

 健康保険法、厚生年金法、労働者災害補償保険法、雇用保険法(以下、社会保険等と言い表します。)に基づく社会保険等加入義務者社会保険等に加入することを要します。

 申請者又は申請者が法人である場合にあっては、その法人の業務を執行する常勤の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する方(※1)を含みます。)が、貨物自動車運送事業法又は道路運送法の違反により、申請日前3ヶ月間悪質な違反(※2)については6ヶ月間(※3)又は申請日以降に、自動車その他の輸送施設の使用停止以上の処分又は使用制限(禁止)の処分を受けた方(当該処分を受けた者が法人である場合における処分を受けた法人の処分を受ける原因となった事項が発生した当時現にその法人の業務を執行する常勤の役員として在任した方を含みます。)ではないことを要し、その他法令遵守状況に著しい問題があると認められる者でないことを要します。
※1これには、相談役、顧問等として事業の経営に関与し、実質的に影響力を及ぼす者を
   含むこととしています。
※2悪質な違反とは次のとおりとされています。
  a 違反事実若しくはこれを証するものを隠滅し、又は隠滅すると疑うに足りる相当の
    理由が認められる場合。
  b 飲酒運転、ひき逃げ等の悪質な違反行為又は社会的影響のある事故を引き起こした
    場合。
  c 事業の停止処分の場合。
※3申請日前3ヶ月間(悪質な違反については6ヶ月間)の起算日は、その処分期間終了
   後とされています。

  新規許可事業者に対しては、許可書交付時等に指導講習を実施するとともに、運輸開始の届出後1ヶ月以降3ヶ月以内に実施される地方貨物自動車運送適正化事業実施機関の適正化事業指導員による巡回指導によっても改善が見込まれない場合には、運輸支局による監査等を実施するものとされています。
損害賠償能力
 自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済に加入する計画のほか、一般自動車損害保険(任意保険)の締結等十分な損害保障能力を有するものであることとし、任意保険等への加入を確保すべき事業者は、貨物用事業用自動車が100両以下の貨物自動車運送事業者とされ、加入すべき任意保険等の賠償額は、被害者1名につき無制限とされています。

 石油類、化成品類または高圧ガス類等の危険物の輸送に使用する事業用自動車については、前項に適合するほか当該輸送に対応する適切な保険に加入する計画など十分な損害賠償能力を有することを要します。

 また、単一特定の荷主の運送の依頼を受け、荷物を運送し、運賃を受ける特定貨物自動車運送事業許可制)、不特定多数の荷主から運送の依頼を受け、荷物を運送し、運賃を受けるのに軽自動車又は二輪の自動車を使用する貨物軽自動車運送事業届出制)があります。